- せっかく来てくれたお客様が「一度きり」で終わってしまう
- 新規集客に広告費をかけても、リピーターが育たず売上が安定しない
- LINEやメルマガを使っているが、効果的な活用方法がわからない
飲食店経営において、「リピーターをどれだけ増やせるか」は、売上の安定に直結する最重要テーマです。
近年、SNSやグルメサイトを活用して新規顧客を獲得する店舗は増えていますが、多くの飲食店が「初回来店で終わってしまう」という課題を抱えています。
実際、一般的な飲食店では来店客の約7割が一度きりの利用にとどまり、2回目以降の再来店に至る割合は3割以下とも言われます。
その一方で、リピーターの維持・育成は新規集客よりも約5分の1のコストで済むとされており、費用対効果の観点からもリピート施策の重要性が増しています。
そこで注目されているのが、「CRM(顧客関係管理)」を取り入れた戦略です。
CRMとは、顧客情報を一元管理し、購買履歴や来店頻度に応じて最適なコミュニケーションを行う仕組みのこと。
たとえば、LINE公式アカウントを活用して誕生日クーポンを自動配信したり、メルマガで季節限定メニューを案内したりと、顧客一人ひとりに合わせた“つながり強化”が可能になります。
本記事では、飲食店がリピーターを増やすために実践すべきCRM施策を、
- LINE公式アカウントの活用法
- メルマガによるリピーター育成
- データ活用による効果測定
といった観点から、具体的なステップでわかりやすく解説します。
「もう一度行きたい」と思われる店舗を目指すために、ぜひ最後までご覧ください。
CRM(しー・あーる・えむ)・・・「Customer Relationship Management(顧客関係管理)」の略。顧客の属性・購買・行動データを管理し、関係を深めることで再来店やロイヤル顧客化を促すマーケティング手法。飲食店では、LINE配信・スタンプカード・予約データなどを組み合わせて実践されるケースが多い。
飲食店におけるリピーターの重要性

飲食店の経営を安定させる上で、リピーター(常連客)の存在は欠かせません。
新規顧客の獲得に注力する店舗は多いものの、「来店して終わり」ではなく「もう一度行きたい」と思わせる仕組みをつくることこそ、長期的な売上を支えるカギとなります。
ここでは、リピーター戦略がもたらす経済的・経営的なメリットを具体的に見ていきましょう。
新規集客よりもリピーター維持の方がコスパが高い
飲食店経営において最も費用がかかるのが「新規顧客の獲得」です。
一般的に、新規顧客を1人獲得するコスト(CPA:顧客獲得単価)は、既存顧客を維持するためのコストの約5倍といわれています。
たとえば、SNS広告やグルメサイトへの掲載費を使って新規集客をしても、継続的に通ってもらえなければ、その投資は一過性で終わってしまいます。
一方で、リピーターは来店頻度が高く、平均客単価も上がる傾向があります。
また、満足度の高い常連客は、自発的に口コミを広めてくれるため、新規顧客の自然流入(紹介)にもつながるのが大きな利点です。
つまり、1人のリピーターを育てることは、新規顧客を増やすことにもつながる「二重の効果」を持つのです。
リピーターが生む“安定経営”のサイクル
リピーターの増加は、店舗経営全体に好循環をもたらします。
たとえば、常連客がSNSで料理を投稿したり、友人を連れて再来店したりすることで、新たな集客チャネルが自然に生まれます。
このように、口コミ→再来店→紹介→新規顧客獲得という「サイクル型の成長構造」が構築できる点が、リピーター戦略の真価です。
また、リピーターが安定して来店することで、売上の波が緩やかになり、仕入れやスタッフ配置の計画が立てやすくなるという運営面でのメリットもあります。
特に飲食店では、季節やイベントによる変動が大きいため、常連客の存在が安定経営を支える“土台”になるのです。
このように、リピーター施策は単なる「再来店促進」ではなく、店舗の利益構造を持続的に強化する戦略といえます。
次章では、その仕組みを支える「CRM(顧客関係管理)」の考え方について詳しく解説していきます。
CPA(しー・ぴー・えー)・・・「Cost Per Acquisition(顧客獲得単価)」の略。1人の新規顧客を獲得するためにかかった広告費や販促コストを指す。数値が低いほど効率的な集客ができていることを意味する。
飲食店のCRM(顧客関係管理)とは何か

リピーターを増やし、顧客との関係を深めるために欠かせないのが「CRM(顧客関係管理)」の考え方です。
単に顧客データを集めるだけでなく、「どう活用して再来店や満足度向上につなげるか」がCRMの本質です。
この章では、飲食店におけるCRMの基本的な考え方と、実践する目的について解説します。
CRMの基本概念
CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、顧客一人ひとりとの関係を継続的に築く仕組みのことを指します。
従来の飲食店運営では、「今日来たお客様が明日も来るかどうか」は感覚的な把握にとどまりがちでした。
しかし、現在はPOSシステムや予約サイト、オンライン注文などを通じて、来店履歴・購入金額・利用メニューといったデータを取得できる時代です。
たとえば、「月に2回来店しているお客様」や「記念日利用が多いカップル」など、顧客の特徴を把握することで、“最適なメッセージ”を最適なタイミングで届けることが可能になります。
このデータ活用によって、「一度きりの来店」を「継続的な来店」に変える仕組みを構築するのがCRMの目的です。
CRMは、単なる情報管理ではなく、「顧客を知り、顧客に合わせて行動するための戦略的基盤」だといえるでしょう。
飲食店におけるCRMの目的
飲食店がCRMを導入する目的は、単にデータを蓄積することではなく、そこから「来店頻度の向上」「客単価の増加」「口コミや紹介の促進」といった成果を生み出すことにあります。
たとえば、以下のような活用が考えられます。
- 来店頻度アップ:前回来店から30日経過した顧客に「再来店クーポン」を自動配信
- 客単価向上:誕生日月の顧客に「特別コースプラン」を案内
- 紹介促進:友人紹介キャンペーンをLINEで配信し、自然な口コミを拡大
また、CRMの強みは「顧客ごとの最適なタイミング」でのアプローチができる点にあります。
すべての顧客に同じメッセージを送るのではなく、来店履歴や属性に応じて配信内容を分けることで、“一斉配信”から“パーソナル配信”へと進化できます。
このようなCRM施策を日常業務に組み込むことで、リピーターを増やすだけでなく、「顧客の満足体験」を継続的に生み出すことが可能になります。
POSデータ(ぽす・でーた)・・・「Point of Sales」の略。レジでの販売時点情報を記録するデータで、どの商品が、いつ、どの顧客に売れたかを把握できる。飲食店では売れ筋メニューやピークタイムの分析にも活用される。
パーソナル配信(ぱーそなる・はいしん)・・・顧客の属性や行動履歴に応じて、個別に最適化されたメッセージを送る手法。飲食店CRMでは、来店日や好みに合わせたクーポン配信などに利用される。
LINE公式アカウントを活用したリピーター施策
リピーター育成において、最も手軽で効果的なツールの一つがLINE公式アカウントです。
日本国内での利用者数は9,000万人を超え、多くの人が日常的に利用していることから、飲食店にとっては顧客との接点を持ち続ける強力な手段となります。
ここでは、LINEを活用した効果的なリピーター施策を、実践的な観点から紹介します。
LINE活用のメリット
まず、LINE公式アカウントの最大の魅力は開封率の高さです。
一般的なメルマガの開封率が約20〜30%であるのに対し、LINEは平均で60〜70%、場合によっては80%を超えることもあります。
これは、LINEが日常のコミュニケーションツールとして浸透しており、通知が埋もれにくいためです。
さらに、LINEでは顧客と“1to1コミュニケーション”を取ることが可能です。
たとえば、顧客からの予約・問い合わせに対して自動応答を設定したり、スタッフが直接チャット対応することで、リアルタイムな関係構築ができます。
これは単なる広告配信ではなく、「顧客とつながる」ための接客チャネルとして活用できる点が大きな強みです。
また、LINEの公式アカウントは無料から始められるうえに、予約フォームやスタンプカード機能などを統合できるため、リピーター施策と店舗オペレーションの両立が可能になります。
効果的な配信内容の設計
LINEをリピーター施策に活用する上で重要なのは、「内容の質とタイミング」です。
ただし、毎日キャンペーン情報を送り続けるだけでは逆効果で、顧客の離脱を招きかねません。
効果的な配信には、“お得”と“共感”をバランスよく組み合わせることがポイントです。
具体的には、以下のような配信内容が効果的です。
- 誕生日クーポン・来店感謝メッセージ:
顧客の記念日に合わせて特別クーポンを配信することで、「自分のためのメッセージ」と感じてもらいやすくなります。 - 新メニュー・季節限定イベントの案内:
「今だけ」「数量限定」といった限定感のある情報は、再来店意欲を高める強力なトリガーとなります。 - 店長やシェフからのメッセージ:
料理へのこだわりや裏話を発信することで、店舗への親近感が増し、“人”を軸としたファン化を促進できます。
また、LINEのリッチメッセージ機能(画像+リンク付き配信)を活用すれば、メニュー写真やキャンペーンページに直接誘導することができ、クリック率の向上にもつながります。
セグメント配信のコツ
より高い効果を狙うなら、全員に同じメッセージを送るのではなく、セグメント配信を行うことが重要です。
セグメント配信とは、顧客を条件ごとに分類し、それぞれに最適な内容を届ける方法です。
たとえば、
- 来店回数別:初回来店客には「再来店クーポン」、常連客には「限定コース案内」
- 性別別:女性にはスイーツ情報、男性には飲み放題プラン
- 利用目的別:「女子会」「デート」「ファミリー」などテーマに沿った提案
このように顧客の属性や行動に合わせて配信内容を最適化することで、反応率は大幅に向上します。
さらに、スタンプカード機能と連携させることで「再来店のきっかけ」を自然に作ることも可能です。
たとえば、スタンプが貯まるたびに「あと1回で特典ゲット!」というメッセージを自動配信すれば、顧客のモチベーションを維持できます。
これらの仕組みを組み合わせることで、LINEは単なる情報発信ツールから、「顧客をファン化するCRMツール」へと進化します。
飲食店にとっては、低コストかつ高効果なリピーター育成施策といえるでしょう。
1to1コミュニケーション(わん・とぅ・わん・こみゅにけーしょん)・・・顧客一人ひとりの属性や行動に基づき、個別対応でコミュニケーションを取るマーケティング手法。LINEでは自動応答や個別チャット対応を通じて、顧客との関係を深めることができる。
リッチメッセージ・・・画像やボタンを使って視覚的に情報を伝えるLINEの配信機能。テキストだけのメッセージよりもクリック率が高く、商品紹介やキャンペーン告知に適している。
セグメント配信(せぐめんと・はいしん)・・・顧客を条件(性別・来店回数・居住地など)でグループ分けし、それぞれに最適なメッセージを送る配信方法。リピーター施策では、個別最適化された体験を提供するために不可欠な仕組み。
メルマガを活用したリピーター育成
LINEが「短く・即時的な接点作り」に強い一方で、メルマガ(メールマガジン)は“深く伝える”コミュニケーションツールとして有効です。
来店後のフォローや、ブランドの世界観をしっかり伝えるには、文章量を確保できるメルマガが欠かせません。
ここでは、飲食店がメルマガを活用してリピーターを育成するための具体的なポイントを解説します。
メルマガの強みと目的
メルマガの最大の強みは、「ストーリーを伝えられる」点にあります。
LINEは短文・即効性のある配信に向いていますが、メルマガは長文で構成できるため、
・料理の開発秘話
・生産者や仕入れ先の紹介
・季節のメニューが生まれた背景
といったブランドストーリーを丁寧に伝え、ファン化を促すことができます。
また、メルマガは画像やリンクを多く挿入できるため、キャンペーン情報・新商品・イベント告知などを詳細に伝達できる点もメリットです。
特に、グルメイベントや限定コースの告知など「読んで理解してもらう」情報を配信する際には、LINEよりもメルマガが効果を発揮します。
目的は単なる告知ではなく、「読者の心を動かし、再来店へのきっかけを作ること」です。
効果を高める配信のポイント
メルマガの効果を最大化するには、内容だけでなく「誰に・いつ・どんなタイトルで」送るかが重要です。
まず注目すべきはタイトル設計です。
多くの人が受信箱をざっと流し読みする中で、開封してもらうためには“パーソナライズ”が欠かせません。
たとえば、
- 「〇〇様限定|記念日ディナーコース10%OFF」
- 「今週末だけ!常連様に先行案内」
のように、個人名や限定感を取り入れることで開封率が高まります。
配信頻度は週1〜2回程度が理想です。頻度が高すぎると購読解除につながり、少なすぎると店舗の存在を忘れられてしまいます。
また、配信テーマは「来店履歴」や「季節イベント」に合わせると効果的です。
例として、
- 夏前なら「ビアガーデン特集」
- 冬には「忘年会コース紹介」
- 記念日利用が多い顧客には「アニバーサリープラン案内」
といったように、タイミングと内容を一致させることが反応率を高めるコツです。
メルマガ×LINEの連携活用
メルマガとLINEを組み合わせることで、より効果的なリピーター戦略を構築できます。
たとえば、メルマガでは「背景やこだわりをじっくり伝える」長文コンテンツを配信し、その後にLINEで「予約はこちら」などの短いアクションメッセージを送ることで、“認知から行動まで”を一貫して導けるのです。
この連携により、
- メルマガでブランド理解を深める
- LINEで即行動を促す(予約・注文・クーポン利用)
という役割分担が明確になります。
さらに、メルマガ内でLINEの登録リンクを設置することで、両チャネル間の流入を相互に拡大することも可能です。
メルマガの読者をLINE友だちに誘導し、よりリアルタイムな接点へとつなげることで、リピート率を一層高められます。
パーソナライズ・・・ユーザー一人ひとりの属性や行動データに基づいて、最適な内容を提供する仕組み。メールの件名や本文に顧客の名前や過去の来店情報を反映させることで、開封率や反応率を向上させるマーケティング手法。
CRMを支えるデータ活用の基本

リピーターを増やすためのCRM施策は、「勘」や「経験」ではなく、データに基づく分析と改善によって成果を上げることができます。
顧客一人ひとりの行動データを正確に把握し、再来店につながる“最適なアプローチ”を導き出すことが、継続的な成長の鍵です。
この章では、飲食店が押さえておくべきデータ活用の基本ステップを解説します。
顧客データの収集と分類
まずは、CRMの土台となる顧客データの収集と整理から始めましょう。
代表的なデータソースは以下の3つです。
- POSシステム:注文履歴、客単価、来店回数などの購買データ
- 予約システム:来店日時・人数・利用目的(誕生日・記念日など)
- アンケートやLINE登録情報:年齢・性別・居住エリア・嗜好などの顧客属性
これらの情報を組み合わせることで、顧客を属性や来店頻度別に分類したリストを作成できます。
たとえば、
- 「月に3回以上来店する常連客」
- 「最後の来店から3ヶ月以上経過している離脱顧客」
- 「記念日利用が多いカップル層」
といった形でセグメント化すると、それぞれに合わせたメッセージ配信が可能になります。
このように、“データを溜める”から“データを活かす”へと転換することで、CRMは真価を発揮します。
データ活用の実践例
収集したデータは、実際の施策に落とし込んでこそ意味があります。
ここでは、飲食店でよく使われるデータ活用の具体例を紹介します。
- 「3ヶ月来店なし顧客」へのリマインド配信
来店履歴をもとに、一定期間来ていない顧客へ「お久しぶりクーポン」や「季節限定メニュー案内」を自動送信。
“忘れられない存在”として再来店を促すことができます。 - 「記念日月」クーポンでリピート率アップ
予約データから誕生日や記念日を特定し、1週間前に「アニバーサリーディナー割引」などの特別案内を送る。
特別感を演出することで、顧客の満足度と再訪意欲が高まります。 - 来店頻度別の特典プログラム
「3回来店でドリンク無料」「10回来店でコース割引」など、スタンプカード機能と連携して利用回数を可視化。
来店のモチベーション維持にもつながります。
こうしたデータ主導のアプローチは、単なる販促ではなく、“顧客理解に基づいた信頼関係の構築”を可能にします。
効果測定と改善サイクル
データ活用の最終ステップは、効果の可視化と改善の繰り返しです。
CRM施策の成果を測定するためには、以下の指標を定期的に追跡しましょう。
- メッセージ開封率:どの配信が興味を引いているかを把握
- クリック率(CTR):どの内容・表現が行動につながったかを分析
- 再来店率:実際の来店につながった割合を確認
これらのデータをもとに、配信タイミングや文面、画像内容を最適化することで、施策の精度を高めることができます。
たとえば、「週末よりも水曜夕方の配信が反応が良い」などの傾向が見えれば、その時間帯に合わせて再設定することで成果を伸ばせます。
このようなPDCAサイクル(計画→実行→検証→改善)を定期的に回すことが、リピーター施策の持続的成功につながります。
セグメント・・・顧客を共通の特徴で分類するグループのこと。来店頻度や年齢、嗜好などの切り口で細分化し、それぞれに合ったマーケティング施策を行う。
CTR(しー・てぃー・あーる)・・・「Click Through Rate(クリック率)」の略。メッセージや広告が表示された回数に対して、実際にクリックされた割合を示す指標。配信内容の関心度を測る目安となる。
顧客体験(CX)を重視したリピーター戦略
データ活用やCRMの仕組みを整えることは重要ですが、最終的にお客様の心を動かすのは「体験」そのものです。
どれほど効果的なクーポンを配信しても、来店時の満足度が低ければリピートにはつながりません。
ここでは、飲食店がリピーターを増やすために欠かせない「顧客体験(CX:Customer Experience)」の考え方と、デジタルとリアルを融合した最新戦略を紹介します。
体験価値がリピートを生む理由
リピーターを生み出す根本は、「味+接客+雰囲気」の総合的な体験価値にあります。
どんなに料理がおいしくても、接客が冷たかったり、店内の雰囲気が居心地悪ければ、再来店の動機は弱まってしまいます。
逆に、料理だけでなく、スタッフの笑顔やちょっとした気配り、心地よい音楽や照明などが組み合わさることで、お客様の記憶に残る体験が生まれます。
こうした「感動体験」は、口コミやSNS投稿を自然に促進します。
特に若年層の顧客は、「体験を共有すること」自体に価値を見出しており、「誕生日サプライズが素敵だった」「スタッフの対応が丁寧だった」といった投稿が無料の宣伝効果となって新規顧客を呼び込みます。
つまり、CXを高めることはリピーターを増やすだけでなく、“顧客が広告主になる仕組み”をつくることでもあるのです。
そのためには、スタッフ全員が「一人のお客様にどう喜んでもらうか」を共通意識として持つことが重要です。
店舗体験の質がブランドの印象を決め、結果的にリピーターの定着率を大きく左右します。
デジタルとリアルの融合(O2O戦略)
リピーター戦略を進化させるうえで注目すべきなのが、デジタルとリアルを融合させたO2O(Online to Offline)戦略です。
O2Oとは、オンライン施策(LINE・SNSなど)からオフラインの来店につなげ、再度デジタル接点でフォローする一連の流れを指します。
たとえば、
- LINEクーポン配信 → 顧客が来店・利用
- 来店後のフォロー配信 → 「ご来店ありがとうございました」+次回特典を案内
- SNS投稿による共有 → 他の潜在顧客への波及
このように、オンライン施策で来店を促し、店頭体験で満足度を高め、再びオンラインで再接点を築くことで、“リピーター循環”を自動化できます。
さらに、スタッフ教育や接客品質の改善にもデータを活用できます。
CRMシステムとPOSデータを連携し、「特定スタッフの対応後に再来店率が高い」「アンケートで高評価が多い」などを分析すれば、現場の接客品質をデータで可視化できます。
こうした取り組みは、「顧客体験の再現性」を高め、スタッフ全体の接客スキル底上げにもつながります。
デジタルとリアルを一体化することで、飲食店は「来て終わり」ではなく、「体験を共有し続ける関係性」を構築できるのです。
CX(しー・えっくす)・・・「Customer Experience(顧客体験)」の略。顧客が店舗やサービスを利用する際に感じる体験全体を指す。料理の味や接客、店内の雰囲気など、すべての接点での体験がブランドの印象を左右する。
O2O(おー・つー・おー)戦略・・・「Online to Offline」の略。オンライン施策(LINE・SNS・Web広告など)から実店舗への来店を促し、さらにオフラインの体験をもとにオンラインで関係を継続するマーケティング手法。リピーター育成に効果的。
成功事例紹介
ここでは、実際にCRM施策を導入してリピーター獲得に成功した飲食店の事例を紹介します。
どの店舗も大規模なシステムを導入したわけではなく、「LINE公式アカウント」「メルマガ」「顧客データ分析」といった身近なツールをうまく活用しています。
自店での取り組みを検討する際のヒントとして、ぜひ参考にしてください。
居酒屋A店:LINE公式アカウントで来店率1.5倍
東京都内の繁華街にある居酒屋A店では、LINE公式アカウントを活用したリピーター施策により、来店率が約1.5倍に向上しました。
従来はクーポンをSNSやチラシで配信していましたが、効果が限定的でリピートにつながらなかったため、LINEによるセグメント配信とスタンプカード機能の導入を実施。
具体的には、「初回来店客」「常連客」「誕生日月の顧客」など、属性ごとに配信内容を分けました。
たとえば、初回来店客には「2回目来店限定10%OFFクーポン」、常連客には「スタンプ5個でドリンク無料」など、“段階的にリピートを促す設計”を採用。
その結果、配信から3ヶ月で再来店率が大幅に上昇し、週末の予約数も安定。
また、スタンプカードを通じて「あと1回来店で特典ゲット!」という通知が自動で届く仕組みを整えたことで、顧客の来店モチベーションが持続的に高まったことも成功の要因となりました。
カフェB店:メルマガでイベント集客成功
地方都市のカフェB店では、メルマガを活用したイベント集客で顧客との関係強化に成功しました。
店舗は「コーヒーとスイーツの専門店」として地域で人気を集めていましたが、平日昼間の客数が伸び悩んでいました。
そこで、CRMツールに蓄積されたデータから顧客の嗜好を分析し、「スイーツ好き」「季節メニュー常連」などのセグメントを作成。
その結果、女性顧客の関心が高い「季節限定スイーツ試食会」を企画し、メルマガで告知しました。
本文には「○○様へ」「先行予約はLINEから」など、パーソナライズされた内容を加えることで開封率が約2倍に向上。
結果として、イベントは定員を超える申し込みがあり、来店後のSNS投稿による口コミ効果も発生しました。
この成功により、イベント後の再来店率も高まり、顧客のロイヤルティ強化につながりました。
焼肉店C店:CRM分析でリピーター売上40%増
郊外型の焼肉店C店では、CRMデータ分析を活用した再訪キャンペーンによって、リピーター売上を約40%伸ばしました。
同店では予約システム・POSデータ・LINE配信情報を連携させ、「来店頻度」「平均利用金額」「利用グループ構成」などを可視化。
分析の結果、特に「家族連れ」「週末利用」「記念日利用」の層が再来店率が高いことが分かり、これらの顧客に向けて“家族割引キャンペーン”や“記念日限定デザートサービス”を実施しました。
さらに、3ヶ月以上来店していない顧客には、「久しぶり割クーポン」をLINEで自動送信。
来店履歴に基づくパーソナライズ施策により、再来店客の売上構成比が全体の60%を超えるまでに成長しました。
このように、CRMを活用した“顧客理解に基づくリピート設計”が、データドリブン経営の成功例として注目されています。
スタンプカード機能(すたんぷかーどきのう)・・・LINE公式アカウントなどに搭載されている、デジタル版ポイントカードの仕組み。来店や購入ごとにポイントを付与し、特典を提供することで再来店を促進する。
ロイヤルティ・・・顧客が特定の店舗やブランドに対して抱く愛着・信頼・継続利用意向のこと。リピーター戦略では、顧客ロイヤルティの向上が長期的な売上安定につながる重要な指標とされる。
よくある失敗と改善ポイント
CRMやLINE配信を活用しても、思うようにリピーターが増えない――そんな悩みを抱える飲食店は少なくありません。
その多くは、「配信のやり方」や「データの使い方」に問題があります。
ここでは、飲食店のリピーター施策でよくある失敗と、その改善ポイントを具体的に解説します。
一斉配信ばかりで効果が出ない
多くの店舗が陥るのが、全顧客に同じメッセージを一斉配信してしまうことです。
たとえば、常連客も初回来店客も関係なく「今週のキャンペーン」を一律で送っても、響き方がまったく違います。
結果として、配信が“ノイズ”となり、開封率やクリック率が低下してしまいます。
改善策は、セグメント別配信による「パーソナル体験」の提供です。
顧客を「初回来店客」「常連」「記念日利用客」などに分類し、それぞれに合わせた内容を配信することで、「自分のための情報だ」と感じてもらえ、反応率が大幅に向上します。
また、配信内容を小まめに検証し、反応の良いメッセージを継続的にブラッシュアップしていくことも大切です。
クーポン乱発でブランド価値が下がる
次に多いのが、割引クーポンを頻繁に出しすぎてブランド価値を下げてしまうパターンです。
確かにクーポンは即効性がありますが、「値下げしないと来ない店」という印象を与えてしまう危険性があります。
効果的に活用するには、“限定感”のある設計にすることがポイントです。
たとえば、「誕生日月限定」「季節メニュー予約者限定」など、来店履歴や利用目的に基づいた特典設計にすることで、特別感が生まれます。
また、「前回来店から90日経過したお客様限定」など、CRMデータを活かした配信にすれば、クーポン配信も戦略的な施策に変わります。
重要なのは、「誰に」「どのタイミングで」クーポンを出すかを明確にすることです。
効果測定をせず、感覚的に運用している
最後に、施策を実施してもデータ分析を行わずに“なんとなく”運用しているケースです。
「最近お客様が増えた気がする」「このメッセージが好評だったはず」といった感覚では、継続的な改善は難しくなります。
改善するには、定量データに基づいた検証を行うことが不可欠です。
具体的には、
- 開封率(メッセージを読まれた割合)
- クリック率(リンクをタップした割合)
- 再来店率(配信後に実際に来店した割合)
などを定期的に追跡し、結果をもとに配信内容やタイミングを改善していくことが重要です。
データに基づく運用は、施策の精度を高めるだけでなく、スタッフ全体で成果を共有できる利点もあります。
「感覚的な運用」から「科学的な改善」へ――これが、リピーター施策成功の最短ルートです。
開封率(かいふうりつ)・・・配信したメッセージが、実際に開封された割合を示す指標。顧客の興味・関心を測るうえで重要なデータであり、タイトルや送信タイミングの最適化に活用される。
まとめと次のステップ
ここまで見てきたように、飲食店のリピーター施策は単なる「割引クーポン」や「お知らせ配信」にとどまりません。
重要なのは、顧客を理解し、継続的な関係性を築き、データを活用して改善を重ねることです。
LINE公式アカウントやメルマガは、比較的低コストで始められる有効な手段であり、小規模店舗でも実践可能な戦略といえます。
記事の総括
リピーター施策の成功の鍵は、「顧客理解 × 継続接点 × データ活用」にあります。
顧客がどんな目的で来店したのか、どんなメニューを好むのかといったデータを活かせば、一人ひとりに合った最適なコミュニケーションを実現できます。
また、LINE公式アカウントやメルマガを活用すれば、高いコストをかけずに継続接点を維持できます。
特にLINEは開封率が高く、メルマガはブランドストーリーや限定イベント告知などに適しています。
両者を組み合わせることで、顧客との接点を多層化し、再来店からファン化へとつなげることが可能です。
このように、CRMの取り組みは単なる販促活動ではなく、店舗の信頼とブランド価値を高める長期的な投資として位置づけるべきです。
今後のステップ
まずは、顧客リストの整理から始めましょう。
POSデータや予約履歴をもとに、顧客を「新規」「常連」「休眠」などに分類することで、配信内容を最適化できます。
次に、セグメント配信や自動配信などの機能を段階的に導入していくのがおすすめです。
いきなりすべてを自動化する必要はなく、最初は「誕生日メッセージ」や「再来店クーポン」のような限定施策から始めても十分効果があります。
さらに、CRMツールやLINE連携サービスを活用すれば、配信の効率化やデータ分析も容易になります。
「どの顧客が、どんな配信で反応したか」を可視化できるようになれば、施策の改善スピードが格段に上がります。
リピーターを増やす施策は、一度の成功で終わりではなく、継続的に磨き上げていくプロセスです。
小さな改善を積み重ね、顧客に「また来たい」と思ってもらえる店舗体験を育てていきましょう。


