「この表現は規制に抵触するのでは?」
「他社の処分事例を踏まえた対策を取りたい」
投資系サービスの広告運用に携わる担当者なら、こんな不安を抱えていませんか?
一度行政処分を受ければブランドイメージの毀損だけでなく、最悪の場合は事業継続が困難になるケースさえあります。
近年では証券会社が適合性原則に抵触する業務運営で金融庁から行政処分を受けるなど、投資関連の広告・勧誘に関する行政処分事例が見られます。
本記事では、実際に行政処分を受けた投資系サービスの広告事例を詳しく分析し、どのような表現が違反とされるのか、そしてリスクを回避するための具体的な広告運用体制の構築方法を解説いたします。
広告効果を最大化しながらもコンプライアンスを遵守する、そのバランスの取り方が理解できるでしょう。
広告違反による行政処分とは
投資系サービスの広告違反は単なる表現上の問題ではなく、金融商品取引法や景品表示法などに抵触する重大な法令違反となります。こうした違反行為には業務改善命令や業務停止命令といった厳しい行政処分が下され、企業の存続にも関わる深刻な影響をもたらすことがあります。
ここでは、広告違反の定義や関連法規、行政処分の種類とその影響について詳しく解説します。
広告違反の定義と該当する主な法律
投資系サービスの広告は複数の法令によって厳しく規制されています。
広告違反
投資系サービスにおける広告違反とは、顧客に対して誤解を与えたり、誇大な表現を用いたり、重要事項を適切に開示しないなど、関連法規に違反した広告・表示行為を指します。こうした行為は、投資家保護の観点から厳しく規制されています。
金融商品取引法による規制
金融商品取引法では、広告規制として第37条で金融商品取引業者等が行う広告には手数料等の契約締結に関する重要事項を表示する義務が定められています。
また第38条では「不確実な事項について断定的判断を提供する行為」や「著しく事実に相違する表示」、「著しく人を誤認させるような表示」などが禁止行為として規定されているのです。
景品表示法による規制
不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)も投資広告に適用される重要な法律です。
- 優良誤認表示の禁止:商品・サービスの内容について実際のものよりも著しく優良であると誤認させる表示
- 有利誤認表示の禁止:価格等の取引条件について実際のものよりも著しく有利であると誤認させる表示
また、投資商品の種類によっては、銀行法や保険業法などの業法による広告規制も適用されることがあります。さらに、日本証券業協会や投資信託協会などの自主規制団体が定める「広告等に関するガイドライン」といった自主規制ルールも遵守する必要があるでしょう。
(不当な表示の禁止)
引用:不当景品類及び不当表示防止法 | e-Gov 法令検索
第五条 事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、次の各号のいずれかに該当する表示をしてはならない。
一 商品又は役務の品質、規格その他の内容について、一般消費者に対し、実際のものよりも著しく優良であると示し、又は事実に相違して当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも著しく優良であると示す表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
二 商品又は役務の価格その他の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種若しくは類似の商品若しくは役務を供給している他の事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの
三 前二号に掲げるもののほか、商品又は役務の取引に関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であつて、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの
行政処分の種類と影響(業務停止・業務改善命令など)
広告違反が認められた場合、金融庁や財務局はどのような行政処分を行うのでしょうか。ここでは行政処分の種類と、それらが企業にもたらす具体的な影響について解説します。実際の処分事例を踏まえることで、違反のリスクと影響の大きさが理解できるでしょう。
主な行政処分の種類
金融商品取引法に違反する広告行為が確認された場合、金融庁または財務局から様々な行政処分が下されることがあります。主な行政処分には以下の3つがあります。
行政処分 | 概要 |
---|---|
業務改善命令 | 比較的軽微な違反に対する処分。違反行為の是正や再発防止策の策定・実施が求められる。 |
業務停止命令 | より重大な違反に対する処分。一定期間、特定業務または全業務の停止を命じる。 |
登録取消し | 最も厳しい処分。金融商品取引業者としての登録が取り消され、該当業務の継続が不可能になる。 |
行政処分による企業への影響
行政処分は金融庁によって「行政処分事例集」として四半期ごとに公表されるのが原則です。これにより、企業名や処分内容、違反事実などが広く一般に知られることになります。
こうした行政処分を受けることで企業は、以下のような多方面の影響を受けます。
- ブランド毀損や顧客の流出、株価への悪影響など、業績面での深刻なダメージ
- 法令遵守体制の再構築や役職員の教育強化などの追加コスト負担
- 特に証券会社などでは、行政処分歴が新規の機関投資家との取引開始の障壁になるケース
課徴金制度
2016年からは課徴金制度も導入されています。優良誤認表示や有利誤認表示といった不当表示を行った事業者に対しては、対象商品・サービスの売上高の3%を課徴金として納付させることができます。金融商品の場合、高額な取引が多いため、課徴金額も高額になりやすい点に注意が必要です。
このように、広告違反は単なる表現の問題ではなく、企業の存続にも関わる重大な問題です。
実際に行政処分を受けた投資系サービスの広告事例
理論的な広告違反の説明だけでなく、実際にどのような広告表現が問題となり、行政処分につながったのかを知ることは極めて重要です。ここでは金融庁による処分事例と、景品表示法など他の法律に基づく処分事例を紹介し、それらの広告表現の問題点と改善方法について解説します。
金融庁による行政処分事例
金融庁は金融商品取引法に基づき、投資系サービスの広告違反に対して様々な行政処分を行っています。これらの事例から、具体的にどのような広告表現が問題視されるのかを学ぶことができるでしょう。
事例1:未登録業者による金融商品取引法違反
2022年、金融庁は無登録で投資ファンドの募集を行っていた事業者に対し、警告書を発出しました。この事業者はウェブサイトで「元本保証型投資商品」「確実に年利10%」などと表示して出資を募っていましたが、金融商品取引業の登録を受けていませんでした。
本件は広告表現の問題に加えて、無登録営業という重大な法令違反が問題となりました。「元本保証」「確実に」などの断定的表現も金融商品取引法に違反するものでしたが、そもそも金融商品取引業の登録なく投資商品を販売すること自体が違法行為だったのです。
事例2:証券会社の誤解を招く表示による処分
2023年、証券取引等監視委員会は証券会社に対する検査結果に基づき、行政処分を勧告しました。
この会社は高齢顧客に対して、外国株式取引のリスク等について、顧客属性に照らして顧客に理解されるために必要な方法及び程度による説明を行うことなく金融商品取引契約を締結する行為を行っていました。
また同社は新興国のテクノロジー関連企業へ投資する投資信託の勧誘に際しても、商品の概要やリスク等について十分な説明を行わず契約を締結していました。
これらの行為は金融商品取引法第38条第9号に基づく内閣府令第117条第1項第1号に違反するとして、行政処分の対象となりました。
景品表示法など金融庁以外の法律による行政処分事例
投資系サービスの広告は、金融商品取引法だけでなく景品表示法などの規制も受けます。こうした法律に基づく行政処分事例も数多く報告されています。
事例1:銀行の仕組預金に関する有利誤認表示
2007年、公正取引委員会は大手銀行3行に対して、外貨建て仕組預金の広告表示が景品表示法第5条第2号(有利誤認)に違反するとして排除命令を出しました。
これらの銀行は広告において高金利が得られる点を強調する一方、為替レートの変動によっては円ベースで元本割れとなるリスクについての表示を小さく目立たない形で行っていました。
公正取引委員会はこの広告表示について「為替レートの変動によって満期時の受取額が表示された元本額を下回る場合があるにもかかわらず、その旨を明瞭に表示していなかった」として、実際のものよりも取引条件が著しく有利であると誤認させる表示と判断しました。
事例2:FX取引業者の表示に対する措置
2018年、消費者庁は外国為替証拠金取引(FX取引)を提供する金融商品取引業者に対して、景品表示法に基づく措置命令を行いました。
この業者は「業界最狭水準のスプレッド」と表示していましたが、実際には多くの時間帯で表示されたスプレッドよりも広いスプレッドとなっていました。
消費者庁はこの広告表示について「実際のスプレッドは表示されたものより広く、取引コストが高くなる場合が多いにもかかわらず、あたかも常に業界最狭水準のスプレッドで取引できるかのように表示していた」として、景品表示法第5条第2号(有利誤認)に違反すると判断しました。
違反に至った広告表現の問題点・改善点
これまで見てきた実際の事例から、どのような広告表現が問題となりやすいのか、そしてどのように改善すべきかについて整理してみましょう。
よくある問題点
断定的表現の使用
- 「確実に」「元本保証」など、投資の確実性を示唆する表現
- 「年利○○%」など、将来のリターンを約束するような表現
- 「プロが作成したシグナル通りなら利益が出る」など、利益を断定する表現
重要事項の不表示・小さい表示
- リスク情報や手数料などの重要事項を記載しない
- メリットは大きく、デメリットは極端に小さく表示する
- 「無料」と表示しながら実際には有料サービスへの誘導を目的としている
誤解を招く優位性の主張
- 「業界最狭水準」など、実際には条件付きの優位性を絶対的なものとして表示
- 「○○倍狙える」など、一部の好条件だけを切り取った表現
- 無登録での営業など、そもそも法的に認められていない営業行為
効果的な改善方法
適切な限定表現の使用
- 「確実に」→「過去の実績では」「可能性があります」など条件付きの表現に
- 「元本保証」→「元本割れリスクがあります」と明記
- 将来のリターンについては「保証するものではありません」と必ず付記
重要事項の明瞭な表示
- リスク情報や手数料をメリットと同等のサイズ・位置に表示
- 為替リスクなど特定の商品固有のリスクを具体的に説明
- 「無料」と表示する場合は、その後の有料サービスについても明記
適正な優位性表示
- 「業界最狭水準」など優位性を主張する場合は、具体的な調査データと条件を明記
- 好条件だけでなく、平均的な条件や不利な条件も併記
- そもそも登録が必要な金融商品取引業は、登録を受けてから広告を行う
投資系サービスの広告を作成する際には、これらの問題点と改善方法を念頭に置き、「顧客にとって誤解のない、適正な情報提供」という視点を常に持つことが重要です。また、広告を掲載する前に法務部門や外部の専門家によるチェックを受けることで、違反リスクを大幅に軽減できるでしょう。
金融広告が違反とされる主なポイント
金融広告が規制に抵触してしまう原因は様々ですが、特に注意すべきポイントがいくつか存在します。ここでは、金融広告において最も違反事例が多い「虚偽・誇大表示」の問題と、「投資勧誘」と「情報提供」の境界線について詳しく解説します。
虚偽・誇大表示の禁止
金融商品の広告において、虚偽表示や誇大表示は厳しく禁止されています。これは顧客が正しい情報に基づいて投資判断ができるようにするための重要な規制です。しかし、何が「虚偽」や「誇大」に当たるのかについての線引きは必ずしも明確ではありません。
虚偽表示
虚偽表示とは、事実と異なる内容を表示することを指します。金融商品取引法第38条では、「著しく事実に相違する表示」が禁止されています。
以下のような表示が典型的な虚偽表示に該当します。
- 実際には元本保証がないにもかかわらず「元本保証型投資商品」と表示すること
- 過去の運用実績を偽って表示すること
- 金融庁などの公的機関から認定や推奨を受けていないにもかかわらず、そのような表示をすること
虚偽表示は意図的に行われる場合もあれば、情報の確認不足などにより過失で行われる場合もあります。しかし、いずれの場合も法令違反となる点に注意が必要です。
誇大表示
誇大表示とは、事実を過度に強調したり、好条件のみを目立たせたりすることで、全体として誤解を招く表示を指します。金融商品取引法では「著しく人を誤認させるような表示」として禁止されています。
以下のような表示が誇大表示に該当する可能性があります。
- 「毎月分配型ファンドで安定収入」と強調しながら、分配金が元本から支払われる可能性について小さく表示する
- 「最大年率15%のリターン」と表示しながら、それが例外的な状況での実績であることを明示しない
- 「業界トップクラスの運用実績」と表示しながら、その根拠となるデータや条件を明示しない
誇大表示の判断においては「著しく」という要件が重要です。日本証券業協会の広告等に関するガイドラインでは、「広告等に記載されている内容を読んだ一般的な顧客が、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認することを客観的に判断して決定する」としています。
投資勧誘に該当する表現と情報提供の境界線
金融広告を考える上で重要なのが、どこまでが「情報提供」で、どこからが「投資勧誘」に該当するのかという境界線です。両者では適用される規制の厳しさが異なるため、この区別は実務上非常に重要になります。
投資勧誘
投資勧誘とは、特定の金融商品への投資を促す行為を指します。金融商品取引法では、投資勧誘に対しては「適合性原則」や「説明義務」などの厳格な規制が適用されます。
以下のような表現は投資勧誘に該当する可能性があります。
- 「このファンドへの投資をお勧めします」など直接的な購入の推奨
- 「期間限定キャンペーン」「申込期限間近」など即時の行動を促す表現
- 特定の金融商品の詳細な条件提示と申込方法の案内
金融商品取引法の規制においては、顧客の投資意欲を刺激する目的で行われる表示は投資勧誘として取り扱われる傾向があります。
情報提供
一方、情報提供とは、投資判断に役立つ一般的な情報や知識を提供する行為を指します。情報提供は投資勧誘に比べて規制が緩やかですが、それでも虚偽・誇大表示の禁止などの基本的なルールは適用されます。
以下のような表現は情報提供に該当すると考えられます。
- 市場動向や経済指標の客観的な解説
- 金融商品の仕組みや特徴に関する一般的な説明
- 投資の基礎知識やリスク管理に関する教育的コンテンツ
金融実務においては、「中立的な立場からの情報提供」と「特定商品への投資を促す勧誘」を区別することが重要とされています。特に、ウェブサイトやSNSなどのデジタルチャネルでは、この区別が曖昧になりがちな点に注意が必要です。
境界線の判断基準
投資勧誘と情報提供を区別する際の一般的な判断基準としては、以下のような点が挙げられます。
表現の具体性
- 特定の金融商品を名指しして購入を推奨する表現は「投資勧誘」の性質が強い
- 商品カテゴリー全般についての説明は「情報提供」の性質が強い
行動喚起の有無
- 「今すぐ申し込む」「詳細はこちら」などの行動喚起がある場合は「投資勧誘」の性質が強い
- 行動喚起がなく純粋に情報のみを提供している場合は「情報提供」の性質が強い
ターゲティングの度合い
- 特定の顧客層や個人に向けたパーソナライズされた内容は「投資勧誘」の性質が強い
- 不特定多数に向けた一般的な内容は「情報提供」の性質が強い
意思決定への影響度
- 投資判断に直接影響を与える具体的な条件提示は「投資勧誘」の性質が強い
- 間接的に役立つ背景知識の提供は「情報提供」の性質が強い
金融広告の実務においては、表示媒体の性質や想定される閲覧者層も考慮すべき要素とされています。例えば、個人投資家向けのSNS広告は投資勧誘と判断されやすい一方、機関投資家向けの専門誌での情報発信は情報提供と判断される傾向があります。
実務上の対応策
投資勧誘と情報提供の境界線が曖昧なケースでは、安全側に立って対応することが望ましいでしょう。具体的には以下のような対応が考えられます。
対応策 | 内容 |
---|---|
免責文言の明示 | 「本コンテンツは情報提供を目的としており、特定の金融商品の購入を推奨するものではありません」といった免責文言を明示。 |
一般的表現の使用 | 個別の商品名を挙げるよりも、投資の基本原則や一般的な市場動向など、より中立的な内容を提供。 |
複数の選択肢の提示 | 特定の金融商品のみを取り上げるのではなく、複数の選択肢を比較検討する形で提示。 |
リスク情報の充実 | リターンだけでなくリスクについても同等以上に詳しく説明。 |
投資勧誘と判断された場合、金融商品取引法の厳格な規制(適合性原則、説明義務など)が適用されます。そのため、広告の中で「これは投資勧誘ではない」と明記しても、実質的な内容が投資勧誘に該当すれば規制の対象となる点に注意が必要です。
行政処分を防ぐ広告運用体制の作り方
投資系サービスの広告違反による行政処分を防ぐには、個別の広告表現の適正化だけでなく、組織としての広告運用体制の構築が不可欠です。ここでは、実務に即した広告運用体制の具体的な作り方を解説します。
広告表現チェック体制の構築(チェックリスト・法務確認)
広告運用における最も基本的なリスク管理手法は、広告表現のチェック体制を構築することです。効果的なチェック体制を整備するためのポイントを見ていきましょう。
広告審査フロー確立の重要性
広告表現のチェックは、単発的なものではなく、組織内で明確なフローとして確立することが重要です。日本証券業協会の「広告等の表示及び景品類の提供に関する規則」では、会員証券会社に対して広告審査体制の整備を義務付けています。一般的に推奨される審査フローとしては以下のようなものがあります。
- 企画段階のチェック:広告企画の初期段階でコンプライアンス上の懸念点を洗い出す
- 制作段階のチェック:具体的な広告表現を作成する段階で法令違反がないか確認する
- 公開前の最終チェック:広告公開直前に改めて全体を確認する
- 公開後のモニタリング:公開後も定期的に内容の適切性を確認する
このような多段階チェックにより、一人の担当者の見落としによる違反リスクを大幅に低減することができます。複数の目による広告審査が、広告違反のリスク軽減に効果的とされています。
実用的なチェックリストの作成
広告表現チェックの効率化と標準化を図るため、具体的なチェックリストの作成が有効です。以下に、投資系サービスの広告チェックに役立つ基本項目を示します。
【基本情報の確認】
□ 会社名・登録番号・連絡先が正確に記載されているか
□ 金融商品取引業者としての登録種別が明記されているか
□ 所属する自主規制団体名が記載されているか
【法令遵守の確認】
□ 金融商品取引法の広告規制に違反する表現はないか
□ 景品表示法の優良誤認・有利誤認に該当する表現はないか
□ 自主規制団体のガイドラインに準拠しているか
【表現内容の確認】
□ 「確実」「絶対」などの断定的表現を使用していないか
□ リスク情報が目立つ形で記載されているか
□ 手数料等の重要事項が適切に表示されているか
□ 過去の運用実績を示す場合、その出典と期間が明記されているか
【ビジュアル面の確認】
□ リスク表示がメリット表示と同等以上の文字サイズで表示されているか
□ グラフや表が誤解を招く表示になっていないか
□ 強調表示(大きな文字、色付き文字等)が誤解を招かないか
金融商品取引法や関連法令に基づく広告規制を遵守するためには、このようなチェックリストを活用した広告審査の実施が有効でしょう。
ガイドライン遵守に向けた教育・共有の仕組み
チェック体制の整備と並行して重要なのが、広告に関わる全スタッフへの教育と情報共有の仕組みづくりです。コンプライアンス意識の向上と最新情報の周知により、問題のある広告表現の発生そのものを減らすことができます。
効果的な社内研修
広告表現に関わる社内研修は、単なる法令の説明にとどまらず、実践的なものであることが重要です。以下のような要素を含む研修プログラムが効果的でしょう。
基礎知識の習得 | 事例に基づく学習 |
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金融商品取引法、景品表示法等の基本的な規制内容 | 過去の行政処分事例の分析 |
自主規制団体のガイドラインの要点 | 問題のある広告表現とその改善例 |
広告審査フローと各担当者の役割 | 自社広告の良い例・悪い例の比較 |
広告の作成・審査に関わる役職員への定期的な研修は、コンプライアンス意識の向上に効果的です。特に入社時研修と定期的なフォローアップ研修を組み合わせることで、継続的な意識向上が期待できるでしょう。
最新情報の共有体制
金融広告に関する規制やガイドラインは時に更新されるため、最新情報を迅速に社内で共有する体制が必要です。以下のような仕組みが考えられます。
定期的な情報発信 | ナレッジ共有システム |
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法令改正やガイドライン更新に関する社内メールマガジン | 広告表現の良い例・悪い例のデータベース |
行政処分事例に関する定期レポート | 過去の社内審査結果の蓄積と検索機能 |
コンプライアンス委員会による報告会 | よくある質問(FAQ)の整備 |
コンプライアンス・リスクの早期発見と共有の仕組みは、投資系サービスの広告運用において特に重要です。問題発生の予兆を早期に把握し共有する体制が望ましいでしょう。
特に投資系サービスの広告担当者には、単なる集客数ではなく、適切な顧客に適切な情報を提供することを評価する仕組みが重要です。
金融業界の広告コンプライアンスに強い専門家の活用
金融商品の広告は法的な規制が複雑で、違反した場合のリスクも大きいため、社内の体制整備だけでなく、外部の専門家を活用することも効果的な対策です。ここでは、金融広告のコンプライアンスに強い専門家の種類や役割について解説します。
弁護士やコンプライアンスコンサルタントの役割
金融広告のコンプライアンスを強化するために、主に二種類の専門家である弁護士とコンプライアンスコンサルタントの活用が考えられます。それぞれの専門家がどのような役割を果たし、どのような場面で活用すべきかを見ていきましょう。
弁護士の役割と選び方
弁護士は法的な観点から広告の適法性を判断し、アドバイスを提供する専門家です。特に金融広告においては、以下のような役割を果たします。
法的リスク評価 | 規制変更への対応アドバイス |
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広告表現の法令違反リスクの評価 | 金融商品取引法や景品表示法の改正に伴う広告対応 |
新たな広告手法の法的問題点の指摘 | 自主規制ルールの変更に対する実務的な対応策 |
競合他社の広告表現との差別化ポイントの法的評価 | 行政解釈の変更に関する情報提供 |
紛争時の対応
広告に関する顧客からのクレーム対応へのアドバイスや、行政処分を受けた場合の対応策の提案をしてくれます。
金融広告を扱う弁護士を選ぶ際には、金融規制の専門知識だけでなく、広告・マーケティングの実務に精通しているかどうかが重要なポイントです。
コンプライアンスコンサルタントの役割と選び方
コンプライアンスコンサルタントは、法令遵守のための実務的な仕組みづくりをサポートする専門家です。金融広告においては、以下のような役割を果たします。
広告審査体制の構築 | 広告表現の実務的アドバイス | モニタリング体制の構築 |
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広告審査フローの設計 | 規制に準拠した効果的な広告表現の提案 | 広告のコンプライアンス状況を定期的に確認する仕組みの構築 |
チェックリストや審査基準の作成 | 業界標準的な広告表現との比較分析 | 社内通報制度など問題発見の仕組みづくり |
広告審査に関わる人材の教育プログラム開発 | NG表現・OK表現の事例集作成 | PDCAサイクルに基づく継続的な改善体制の確立 |
弁護士が法的な問題点の指摘に強いのに対し、コンプライアンスコンサルタントは実務的な体制づくりや教育に強みを持つ傾向があります。
広告違反の行政処分に関するよくある質問
広告違反の行政処分に関するよくある質問について、行政処分に関する重要なポイントを解説します。
過去の広告でも後から処分されることはありますか?
過去に掲載した広告であっても、後から行政処分の対象となる可能性があります。金融商品取引法には明確な時効規定がなく、問題が発覚した時点で調査・処分が行われることがあります。
このため、過去の広告資料は適切に保管し、問題が指摘された場合には迅速に対応できる体制を整えておくことが重要です。
行政処分を受けると事業にどのような影響がありますか?
行政処分は事業に深刻な影響を及ぼします。まず直接的には、業務改善命令による業務プロセスの変更や、業務停止命令による売上減少といった影響が生じるでしょう。
間接的な影響としては企業イメージの毀損や顧客からの信頼低下が挙げられます。金融業界では信頼が最も重要な資産であるため、こうした信頼喪失は新規顧客獲得の困難化や既存顧客の解約増加につながりかねません。
まとめ|事例から学ぶ、信頼される広告運用体制の重要性
本記事では、投資系サービスの広告違反による行政処分事例と、それを防ぐための広告運用体制について詳しく解説してきました。
金融商品の広告は厳格な法規制の対象であり、違反した場合には業務改善命令や業務停止命令などの行政処分を受けるリスクがあります。適切な広告運用は法的リスクを回避するだけでなく、顧客との信頼関係を構築し、長期的な事業発展の基盤となるものです。
不適切な広告表現は短期的な集客効果があったとしても、行政処分によるブランド毀損や顧客信頼の喪失といった深刻な代償を伴うことになるでしょう。
コンプライアンスを意識した広告運用を行うことで、顧客との信頼関係が構築され、長期的な事業成長につながる好循環を生み出すことができます。